不育症とは

不育症・着床障害イメージ

不育症は「妊娠は成立するものの、流産・死産を繰り返してしまい、出産に至らない場合」と定義されています。なお2回以上の(10週未満)流死産を不育症、3回以上の連続する(10週未満)流死産を習慣流産と呼びます。
不育症の頻度は5%、習慣流産の頻度は1%と言われています。
流産は妊娠最大の合併症で、約15%に起こると言われており年を経るごとに上昇していきます。また40歳以上ともなれば、40%を超えるようになります。この場合、卵子の老化をきっかけとした染色体異常によるものではないかと言われています。流産の原因については、胎児の染色体異常をはじめ、抗リン脂質抗体症候群などの自己免疫異常、子宮奇形、夫婦染色体異常(染色体の構造が夫婦のどちらかで異常がみられる)、内分泌疾患(甲状腺機能異常、糖尿病 等)などが挙げられ、原因不明のケースもあります。

検査について

不育症が疑われる場合、原因(リスク因子)を特定するための検査を行っていきます。具体的には、子宮の形を調べる検査として、子宮卵管造影検査(造影剤を用いたX線撮影で子宮の内腔の形を調べる)、経腟超音波検査(子宮奇形、子宮内の病変の有無(子宮内膜ポリープ、子宮筋腫)など)、子宮鏡検査を行います。また血液検査から、甲状腺をはじめとするホルモン量の測定、抗リン脂質抗体の有無(同抗体が検出されると血栓ができやすく、胎児に栄養や酸素が行き届きにくくなるので流産しやすい)、血液凝固因子、夫婦の染色体異常の有無などを確認することができます。

治療について

原因(リスク因子)が特定すれば、それに応じた治療を行っていきます(検査をしても6割以上の方の原因(リスク因子)は不明)。例えば、抗リン脂質抗体がある、血液凝固異常という場合は、低用量アスピリンとヘパリン注射の併用となります。また甲状腺機能異常や糖尿病等の内分泌異常が原因の場合は、薬物療法等でホルモンの分泌量や血糖値などをコントロールし、これら数値が安定すれば妊娠に臨むようにします。

また子宮形態検査の結果、子宮奇形が認められてもそれによる治療をしないことが多いです。ただ中隔子宮によって流産が繰り返されている場合、子宮鏡で中隔を取り除く手術(子宮鏡下中隔切除)を行うこともあります。

夫婦染色体異常は、何か自覚症状が出ることはありません。ただ流産率は4割程度と言われています。完治させる治療法は現時点で確立しておりません。この場合、遺伝カウンセリングを受けるほか、異常があれば着床前診断を受けることもあります。

着床障害とは

「着床障害」とは体外受精や顕微授精でできた形態が良い受精卵(胚)を移植しても、繰り返して着床しない状態を言います。

着床の課程はとても複雑な上、着床しない原因は「胚側」、「子宮側」、もしくは「その両方」にある場合があり着床障害の原因をはっきりさせることはとても困難です。

着床障害の原因として様々なものが考えられており、それに伴い治療法がありますが、現在研究が盛んにおこなわれています。

子宮側の原因としては子宮粘膜の直下に発生した子宮筋腫や子宮内膜ポリープなど、着床の場に変化が起きてしまうものがあります。また、先天的な子宮奇形(中隔子宮など)によって着床しにくくなることもあります。このほか、クロミッドの長期使用や中絶手術を繰り返すと子宮内膜が厚くなりにくくなります。この厚さが6㎜以下となれば、妊娠の成立が難しくなることもあります。

ほかに子宮側の原因として近年、子宮内膜炎という内膜の炎症が原因になる着床障害もでてきております。

また免疫異常という概念もでてきております。

検査について

超音波検査や子宮鏡検査で子宮内に形態的異常がないかどうか検査を行います。

治療について

着床障害の原因が、子宮筋腫や子宮内膜ポリープであれば、手術を行う場合があります。
(子宮内膜ポリープであれば当院で手術可能ですが、子宮筋腫や中隔子宮等であった場合、手術可能な病院を紹介いたします。)